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フェルミナ・アーク ②

Penulis: 秋月 友希
2025-06-22 22:48:44
 エレナは石造りの小屋の前で立ち尽くしていた。

 遠くから聞こえる鳥のさえずり──けれど、どこか霞んでいる。現実の音なのか、それとも記憶の残響か……

 ふと、足元の影が揺らめき、エレナは視線を落とした。

「どうして……こんな場所に……」

 目に飛び込んできたのは──古びた懐中時計だった。

 エレナはゆっくりとそれを拾い上げた。銀の細工は擦り切れ、蓋にはうっすらと指の痕が残っている。

 蓋を開けば微かに音を立てて時を刻もうとするが、針はもう動かない。そこに刻まれた時間は、二人が最初に出会った瞬間を差し示していた。

 掌に残る重みが記憶の扉をゆっくりと開いていく。

 エレナは自分の中で、ずっと閉じ込めてきた感情が揺らぎ出すのを感じた。

 シオンが森の研究に夢中だった頃、シオンがよく胸元に下げていたものだ。「観察の時間を記録するため」──そう言って笑った、あの横顔が脳裏に浮かぶ。

 そのとき風が吹き抜け、懐中時計の内蓋に仕込まれていた小さな写真が、ふわりと宙に揺れた。

 そこには、小さな草原に射し込む柔らかな陽光の中、シオンと、その隣で身を寄せるように微笑む私の姿があった。時間の彼方に置き去りにしてきた、まだ壊れる前の記憶──

 胸の奥で記憶が静かに波紋を広げていく。

 これはシオンが遺したものではなく、私が置き去りにしてきた想いだ。

「もう平気だと思ってたのに……」

 囁くようなその声に、森の風がそっと頬を撫でた。慰めるように、もしくは確かめるように。

「私……ずっと、忘れたふりをしてただけだったんだね」

 声は震えていない。けれど、その目の奥には、ずっとしまっていた想いが溶け出していた。

 あのとき言えなかった言葉が、今も胸の奥に引っかかったままでいる。

 永遠に届かない想い……

 私はまだシオンのことをきちんと送り出せていない。シオンが亡くなったという現実から背を向けたままだ。

 強くあろうとするほど、あの人との記憶に触れるのが怖くなる……

 あの優しい声、穏やかな横顔、森のことを語るときにだけ見せた無邪気な情熱──その全てが今もなお、私の中では色あせていない。

「エレナ、どうしたの?」

 リノアの声がそっと耳に触れ、現実へと感覚が引き戻される。

「あれっ……消えた……?」

 エレナは掌を見つめた。

 さっきまで、そこにあったはずの懐中時計がない。

 あの写真も、あ
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